「……どうしたんだよ?」
勇吾は、来客用玄関の床に敷きつめられたタイルを見ながら、ぶっきらぼうにきいてくる。
とりあえず無視されなかったことに、ほっとした。
「あ、あのさ、今日勇吾に話したいことがあるの」
杏奈がそう告げると、勇吾が顔をあげた。キリッとした二重の目に吸い込まれそうになってしまう。
「話って……なんだよ?」
「えーっと、ちょっとここでは……だから、放課後、教室で待っていて」
杏奈は、体が熱くなり、赤い顔でおかしな汗をかきながらも、必死に伝えた。
「そんなに大切な話なのか?」
勇吾の問いかけに、杏奈は何度もうなずく。
勇吾が、考えるために黙っている間が、永遠のように感じた。
「わかったよ。放課後な」
勇吾は、そう言うと、背を向けて歩きだした。
勇吾の背中が、見えなくなると、緊張の糸が切れて、よろめくように壁にもたれかかった。
はあ、むちゃくちゃドキドキしたぁ。でも、ちゃんと話せて良かった。
一花とのケンカは気がかりだったが、杏奈がどうこうできる問題ではない。
杏奈は、手で自分をあおぎながら、大きく息をついた。

