「そうか。だが、このトイレは老朽化していて、大変危険だから、2度と入るんじゃないぞ。水も止まっているはずだが……」

「あの、トイレに入ってから、腹痛はおさまって、だから使ってないので大丈夫です。もう入らないので、すみませんでした」

光子が、深々と頭を下げて謝ったので、春山は、それ以上追求するのをやめた。

しかし、その時、杏奈は見た。
光子が後ろ手に隠していた四角い物を、慌てたようにポケットに入れるのを。

今、一体なにを隠したんだろう、と杏奈はなんとなく気になった。

春山が、パンっと手を叩く。

「よし、清掃作業を再開するぞ! 元の場所に戻れ」

春山の一声で、みんなぞろぞろと歩き出す。

ギリギリで助かった詩織たちは、さすがにおとなしくなり、ちゃんとゴミ拾いをしていた。

春山がうでを組んで監視していたので、一言も話すことなく、みんな黙々と作業をしていた。