杏奈は、ラブチェリーというケータイ小説サイトで執筆活動をしている。ペンネームはANAN。杏奈という本名から取ったものだ。
もちろん夢は、自分の作品が書籍化されること。
ANAN先生!と呼ばれ、人気作家になりサイン会を開くことを毎日妄想している。

しかし……。
杏奈は、携帯電話の画面に視線を落とす。

1作目の【甘々警報発令中!】といい、今回の作品といい、まったくといっていいほど読者がつかないのはなぜだろう。
自分で言うのもなんだが、小中と国語の成績は良く、文章には自信があるというのに。

ここ最近で書籍デビューした作家たちの小説を読んでみる。

「これなら私の小説のほうが、ずっと面白いのに……」

杏奈は口をとがらせながら、本音をもらす。

読者数2500人突破! さらに、プロフィール欄には、中学2年生と書かれており、それが、さらに杏奈を焦らせた。

いいな。私も1日でも早く書籍デビューしたい!!

ラブチェリーで書籍化となるためにはふた通りの方法がある。
ひとつは、たくさんの読者に読んでもらい、ランキングの総合1位に輝くことだ。事実、ここ最近書籍化された作品は、ほとんどランキングで1位になっている。

もうひとつは、コンテストに応募することだ。
実は、甘々警報発令中!をラブチェリーのコンテストに応募している。本当は、優等生くんの裏の顔!?を応募したかったのだが、間に合わなかった。
9月上旬に、最終選考に残った作品が発表されるので、杏奈はその運命の日をドキドキしながら待っている。