「杏奈！」

勇吾に手をひっぱられ、すぐに立ちあがった杏奈だったが、後ろを見てしまった。

――光子を先頭に、詩織と伸二郎が右に左に体を揺らし、血肉をこぼしながら、走っている。

さらに下半身を食われてしまった蓮希は、両手で這うようにして、こちらへ向かっていた。とんでもないスピードだ。

「ひぃっ――」

あまりにもおぞましい姿に杏奈は悲鳴をあげ、走り出した。

とにかく下へ逃げよう、と階段を降りようとしたときだった。

「～こっちだよ！」

上から声がした。
見あげると、屋上へと続く階段から顔をだした一花が、血相を変えて手招きしている。

――しかし、屋上はカギがかかっているはずだ。
だが、もうどこにも逃げ場がない杏奈たちは、一花が垂らしたクモの糸のようにか細い希望にすがるしかなく、屋上へ続く階段を駆けあがった――。