「じゃあ、おれの兄ちゃんが言っていた、夢ヶ丘高校で起きた呪われた事件も、全部あいつのせいだったのか? でも、おれたちは、あいつになにもしていないのに、なんで……」

蓮希が混乱していると、「きっと……」と一花が口を開いた。

「きっと、欲望を持った人間全員を怨んでいるのよ……」

顔面蒼白の一花が言うと、妙な説得力があった。

「うわあああっ」と伸二郎が、耳をふさぐ。

「そんな昔からいる怨念を持った悪霊に、ぼくらは呪われてしまったんだ! おしまいだっ、もうおしまいだ!」

伸二郎の悲痛な叫びが、教室に響く。

杏奈は粉々になってしまった10円玉の残骸を、見つめることしかできなかった。