――杏奈が目を開けると、教室に戻っていた。

今のは一体……。

全身が冷たい汗をかいており、ブルリと震えた。

勇吾も青ざめた顔をしており、一花たちはその場に座りこんでいた。

どうやら、今のは幻覚ではなく、この場にいた全員が見たようだ。
まるで映画のワンシーンを見ているかのようにリアルなものだった。

ズズズ……と10円玉が動く。

【みんなゆるさない おまえらはのろわれた】

「うっ」

10円玉が炎のように熱くなり、杏奈はくぐもった声をあげ、勇吾と共に、とっさに指を離した。

ピキピキという音がして、10円玉がまっぷたつに割れ、粉々に砕け散った。

教室は張り詰めた刺すような空気に包まれていた。

「今さっきの、お前たちも見たんだろ?」

勇吾がきくと、一花たちが一斉にうなずいた。

「マリア様って、殺されて産まれてこれなかった赤ちゃんの霊なの?」

詩織が自分の肩を抱きながら、つぶやく。
一花は、唇を噛みしめて、じっとうつむいていた。