トイレに遺棄されたマリの死体は、当然動くわけがない。
しかし、どこからともなく、「おぎゃあ、おぎゃあ……」という赤ん坊のかすかな声がしていた。

次第にその声は大きくなり、トイレの鏡に霜がおり、冬のような寒さになっていた。

「おぎゃあああぁぁ」

産声のような絶叫がトイレに響き渡る。
死体となった母、マリの股から、裸の赤ん坊が産まれ落ちた。
その肌はローソクのように真っ白で、トイレの床の上ですぐに四つん這いになった。

「まんまぁ、まんまぁ……」

赤ん坊が呼びかけると、死んでいたはずのマリの体が、電流でも流れたようにビクンッと大きくのけぞり、よろよろと立ちあがった。
その手には、携帯電話が握りしめられている。

それを見た赤ん坊が、喜ぶ。
きゃっきゃっ、という声をあげながら――。

そして、マリを殺した愛華たちに呪いの予言メールが次々と届き、全員がおぞましい死を迎えていた……。

「ミンナシネ」

赤ん坊の甲高い笑い声が、響いた。