愛していた人に、裏切られたうえに、借金まで背負わされて、心身ともにボロボロだろう。

「どうしよう……生活していくだけで精いっぱいなのに、500万円も返済していかなくちゃいけないなんて……。もうおしまいよ、ぜんぶ母さんが悪いの。ごめんなさい、ごめんなさい」

母は気がふれたように、ごめんなさい、と繰り返して泣きじゃくる。

「ちょっと待っててくれ」

勇吾は自室へ走り、腕時計を拾ったお礼にもらった小切手を持ってきた。

「これを現金にすれば、借金の足しになるから」

小切手を見た母は、仰天していた。

「どうして300万円なんて大金を……」

「落し物のお礼でもらったんだ。母さんにあげようと思っていたものだから、気にすんなよ」

「勇吾……騙されたお母さんがバカだと思わないの? 呆れないの?」

すがるようにきいてくる母の肩に、そっと手を置く。

「なに言ってんだよ。おれが不良になってしまったとき、母さんは絶対に見捨てなかっただろ? おれたちは家族なんだから、なにがあっても助けあわないと」

「勇吾……」

母が、子供のようにしがみついてきて、大泣きした。

しかし、あと200万円も借金が残っている。
どうすればいいんだ……。

1万円札に羽がつき、一斉にはばたいていく光景が頭に浮かぶ。
それが、先ほどのメールの文章に似ていることに気付いた勇吾は、しばらく動けなかった。