「勇吾……ごめんなさい。母さんバカでごめんなさい……」

そう言うと、母はまた、わあっ、と泣きだしてしまった。

「母さん、落ち着けって」

勇吾は、母をなだめて、ゆっくりと話をききだした。
母は、泣きながらもぽつりぽつりと語りだしてくれた。

4月に職場に入ってきた40代の浜口という男と、母は恋仲となっていた。
再婚も真剣に考えていたという。

先日浜口から、独立してデイサービスの施設を作りたいと、話をされ、その際、保証人になってもらいたい、と頼まれた。

デイサービスが完成すれば、副所長として自分のもとで働いてほしい、と浜口から言われた母は、生活も楽になるし、浜口とは結婚するつもりだったので、保証人になるサインをした。

しかし、昨日出勤すると、浜口は無断欠勤をしていた。
不安を覚えた母が、電話をかけると携帯電話が解約されており、連絡がつかない状態となってしまった。
母に残されたのは、保証人となってしまったためにできた借金だけだった。

「保証人って、いくらだったんだ?」

「……500万円」

「ごっ……」

500万円なんて、ウソだろう!?
そう勇吾は叫びたかったが、これ以上母を落ちこませたくなかったので、のど元にとどめておいた。