「おれは、小さいころから発作を起こしていて、いつも死が身近にあったから、人を好きにならないつもりだった。おれが死んだら、残された恋人を悲しませてしまうと思っていたから。
だけど、あの日、詩織に一目ぼれして、気付くと好きだと告白していた。
おれも普通の人みたいに恋愛ができると思っていた矢先に、発作が起きてしまった。
前に先生から言われていたんだ。次に発作が起きたら、命にかかわってくるので、成功率の低い難しい手術を受けなければいけない、と。
ごめん、詩織……好きになってしまってごめん。おれなんかを好きになってくれて、ありがとう……」

「そんなこと言わないで!」

ふたりは、とめどない涙を流していた。

どれくらい時間が経過しただろうか。
涙で濡れた唇を、響太が、ゆっくりと開く。

「詩織、もう別れよう。まだ付き合って日が浅いから、すぐおれのことを忘れられるはずだ。他に好きな人を作って、詩織は幸せになってくれ」


「いやっ! 私は響太が好きなの! 愛してるの!!」

響太の手を握りしめ、詩織は泣き叫んだ。