だらりと長い舌を出した土佐犬のように大きな黒い犬が、蓮希を見てきているではないか。首輪はしておらず、その目は血走っている。

――ヤバイ。

そう思ったのと同時に、大きな黒い犬が、とんでもない速さで走ってきて、蓮希に飛びかかってきた。

「ぐぅぇっ」とのどがつぶれたような声をあげる。

大きな黒い犬が、唸り声をあげ、鋭い歯をむきだしにして、吠えかかってくる。

「誰か、誰かぁ助けてくれぇ。うぎぃやあああああ!!」

蓮希の涙交じりの絶叫は、分厚い雲が立ち込めた夜空に吸い込まれていった。