ふざけんじゃねえよ!
蓮希は、体中にドブネズミをまとったまま、階段をはいつくばるようにして、のぼっていく。
なにも知らずに階段をおりていた人々の、悲鳴がきこえてきたが、立ち止まるわけにはいかなかった。

なんとか、外へ脱出した蓮希は、道路の脇にできていた縦長の水たまりに、勢いよく飛びこんだ。

さすがにドブネズミたちも、この反撃には参ったようで、四方八方に逃げていく。
蓮希は、水たまりから立ちあがると、水滴を全身から滴らせながら、繁華街のほうへと逃げだした。

なんだって、急にカラスやネズミが襲ってくるんだ!?

先ほどのメールが、蓮希の脳裏をよぎる。

確か、獣がふさわしいとかどうとか書いていたが、まさか……。

肩で息をしながら、雑居ビルの間にある空間に滑りこむ。
全身ずぶ濡れになったせいで、体が冷たく、もう体力の限界だ。

うつむいて、呼吸を整えていた蓮希の耳に、ハッハッハッ、という湿った息遣いが届いた。

ま……まさか……。

おそるおそる顔をあげた連希は、ひっ、と息をのむ。