頭に飛び乗ってきたドブネズミの、長い尻尾が蓮希の頬を撫でてきたので、鳥肌がぞわぞわとたった。

飛びかかって来るドブネズミの中には、大人の拳より大きなものもいる。

「うわあ~っ」

悲鳴をあげる蓮希の体中に、ドブネズミたちがまとわりついてきた。
遠目からだと、毛皮のコートでもまとっているように見えるかもしれない。
ただし、耐えがたい悪臭と、想像を絶する数のばい菌付きだ。

蓮希は、悪臭に吐きそうになりながら、なんとかしてドブネズミたちを体から離そうと、床を転げ回った。
しかし、ドブネズミたちは、制服に前歯をつきたてており、なかなか離れてくれない。
そうこうしているうちに、前歯が皮膚にまで達してきたので、蓮希は悲鳴をあげた。

ドブネズミ1匹だとたいしたことないのだが、これだけの数に一斉に攻撃されると、恐怖でしかない。

「助けてくれー」

蓮希は、叫びながら、転げ回っていたが、誰も助けようとはしてくれない。
はたから見ると、よほど滑稽なのか、中には携帯電話で笑いながら動画を撮影している輩もいる。