蓮希は、傘を左手に持ちかえ、メールを開いてみた。

【†色欲† 盛りのついた汚らわしい獣のようなあなたには、獣がふさわしいことだろう】

「なんじゃ、こりゃ」

蓮希は、すぐさま携帯電話を胸ポケットに戻した。
新手の迷惑メールだろうか。それにしては、URLも付いていなかったが……。

「まっ、いっか」

たいして気にもせずに、女の子の品定めへと戻ることにした。

その時、バサバサと、頭上で音がした。それはだんだんと近づいてくる。

バサッ、バサッ……。

まるで羽の音のような……それもすぐそばできこえている気がする。

すると、傘に勢いよく、なにかがぶつかってきた。おどろいた蓮希は、傘を落っことしてしまった。

「うおっ、なんだ!?」

雨で濡れた顔をあげた連希が見た物は、真っ黒な羽をしたカラスだった。それも3羽おり、カーッという不気味な鳴き声を合図にしたように、一斉に襲いかかってくるではないか。

あるカラスは蓮希の肩に、鋭い爪をした足を食いこませてきて、別のカラスは、頭をつつきまわしてくる。
最後の1羽は、カーッ、カーッ、と鼓膜をつんざくような鳴き声をあげて、蓮希の周りを飛び回っていた。