新学期が始まってから、１０日ほど過ぎた。

勇吾と一花は、相変わらず、朝一緒に登校してくる。
あのふたりは、付き合っているんじゃないか、という声が、ちらほらと、杏奈にも聞こえ出していた。

しかし、さらにおどろくことが起きた。一花が、詩織と一緒に行動するようになったのだ。
どちらから声をかけて、仲良くなったかは、わからないが、詩織は完全に息を吹き返していた。

以前のように、弱った獲物を探すような鋭い目つきになり、光子への陰湿な嫌がらせを復活させていた。
おまけに、その嫌がらせに、一花も参加している。

光子の横を通り過ぎると、一花と詩織は意地悪く笑い、

「あの汚デブって、火をつけたらよく燃えそうじゃない？」

などと、聞えよがしに話していたこともあった。

光子は、聞こえていない風に装っていたが、太い肩が小さく震えていた。

女子と群れず、かっこいいと思っていた一花が、詩織と同レベルだったことがわかり、なんだか杏奈はがっかりしていた。

しかし、この調子では杏奈に火の粉がくるのも時間の問題だろう。その予感はすぐに的中することになった。