「それは、ひどいっすね! でも死んだらいけないっすよ」

「なんで、死んだらだめなの? こんなに胸が苦しくて辛いのに」

女が、ひっくひっくと泣きじゃくる。

「うーん……生きてたら、いいことありますって。たぶん」

蓮希は、適当にそう答えて、元気を出してもらおうと拳をつきあげた。

それを見た女がクスリと笑う。

「そっか、そうだよね。生きてたらいいことあるよね。それにこのまま死んじゃったら、あたしの最後の男は、あの裏切り者のクソ野郎のままだもんね。
そーだ! 君が上書きしてよ」

「えっ、上書きってなにを――」

蓮希の続きの言葉は、女の柔らかい唇でふさがれた。
長い髪はシャンプーの甘ったるい香りがして、頭がくらくらしてくる。

音をたてて、キスをされ、蓮気はなすがままだった。

女は長いキスを終えると、蓮希に抱きついてきた。

「上書きって意味は、このあとホテルで教えてあげる」

耳元で艶っぽく、ささやかれた蓮希は鼻血が出そうになった。

そして、恋人のように手をからませたふたりは、ホテル街へと消えていったのだった。