何気なく、ビルとビルの間の空間に視線をやると、大きなポリバケツの横に、若い女が座りこんでいた。
うつむいているので、ロングヘアーの明るい髪色ということしかわからないが、ミニスカートから生足がのぞいていたので、パンツぐらいは拝めるかもしれない、と蓮希はよこしまな思いを胸に、近づいてみた。

女は、蓮希がそばにいることにも気付かずに、ただうつむている。
もしかしたら、体調でも悪いのかもしれない、とさすがの蓮希も心配になってきた。

「あのぉ、大丈夫っすか?」

とりあえず、そう声をかけてみる。

すると、女の肩が少し揺れ、ゆっくりと顔をあげた。

20歳前後だろうか。バッチリとしたメイクで、全体的に派手な顔をしており、蓮希は胸が高鳴った。

「ねえ、君、ちょっと話きいてくれる?」

つけまつげをつけた目を潤ませながら、女が言う。

唐突にそう言われた蓮希は、うなずいておいた。座って、と女が手招きしてきたので、言われた通り、その横に座りこむ。

「さっきさー、高校のときからずっと付き合ってた彼氏にふられちゃったの。好きな人ができたって。でさ、その好きな人って、あたしの親友なのよね。しかもすでに両想いなんだって。
それって、今まであたしの目を盗んで、ふたりでこっそり連絡とったりしてたってことだよね? そう思ったら、死にたくなっちゃてさー」

女はまくしたてるように言うと、ワーッと声をあげて泣いた。
ショックのあまり、こんなところで落ち込んでいたらしい。