翌朝。
ついに優等生くんの裏の顔!?の読者数が、3000人近くとなっていた。ランキングは相変わらず1位を死守しており、その効果だろう。

感想欄のコメントも毎日大量に書きこまれるので、返事がとても追いつかない。
うれしい悲鳴をあげるとは、まさにこのことだ。

杏奈がホームルームが始まる前の教室で、感想欄のコメントを読んでいると、息を切らした蓮希が走って来た。

すぐさま本を読んでいた光子の元へ向かう。

「山根、中沢からきいたぞ! おれの願いごとも叶えてくれ!」

教室中に響き渡るような声で、蓮希が叫ぶ。

クラスメイトたちが、なにごとだろう、と光子と蓮希を見ていたので、杏奈はハラハラした。
特に伸二郎は熱心な目つきをしている。

きっと願いごとが叶った詩織が、うれしくて、使い人の光子が説明すべき大切なところも、軽い調子で蓮希に教えたのだろう。

光子は、無表情で読みかけの本をパタンと閉じた。

「次はおれに幸せを分けるって、中沢が決めてくれたんだ! だからおれにも早くそのマリ――」