切符を買っていた女性が、その音におどろき、小銭をおとしてしまっていた。

「事故だぞ!」
「なになに?」
「原付バイクがバスにぶつかったらしい!」

そんな会話があちこちからきこえてくる。

――原付バイク。

一花は、ハッとして駅から走り出た。

まさか、まさか……。

バスが停車したそばで、黒い煙があがっており、事故現場には野次馬ができつつあった。

人の群れをかきわけて、一花は無我夢中で前へと進む。

バスの後方部分が、へしゃげており、そのそばに黒い煙をあげて、スクラップのようになった原付バイクが転がっていた。

「猛スピードでバスにつっこんでったんだよ。ありゃ、ブレーキが壊れてたに違いない」

事故を目撃した老人が、そう話しているのがきこえた。

さらに道路には投げだされた直也と、まどかがいた。

ふたりとも、手足がおかしな方向に曲がっており、「ううう……」と地をはうような声でうめいている。

――マリア様だ。マリア様が天罰を与えてくれたんだ。

目の前で、うめき苦しむふたりを、一花は息をのんで見つめていた。

どこかから、救急車の音がきこえてきた。