・・・この家は、凄く温かい。
親がいなくても、きょうだいが支えあっている。
柚美が『スマイルちゃん』と呼ばれるほどの笑顔を見せられる理由が、わかる気がする。
こんな家で育てば、笑顔が絶えないだろう。
「お兄ちゃん、寝たの?」
「柚美。うん、寝たみたい」
「桜田。今からでも私の部屋で寝なよ」
「そういうわけにはいかない」
「頑固だなぁ・・・」
「・・・柚美、聞きたいことがあるんだけど」
「何ぃ?」
俺は気になったら調べたくなる性質(たち)。
柚美を前に座らせ、すぐに躊躇わず聞いた。
「柚美、妹ちゃんたちが小学校卒業したら芸能界やめるって本当?」
「・・・え?」
柚美の表情が明らかに曇る。
「お兄ちゃんから聞いたの?」
「柚美はやめるわけにはいかないと思う。
柚美だってやめたいと思っていないだろう?」(無視)
「・・・思っているわよ」
「嘘だね。
柚美は芸能界が大好きなはずだ。
演技をすることも、台本を覚えることも」
「確かに好きだけど・・・」
「なら続けるべきだ。
俺は柚美の才能を無駄にしたくない」


