「桜田くんは、どうして歌手を目指そうと思ったんですか?」
麦茶を渡しながらハルさんは言う。
「どうして・・・ですか」
「言いたくなければ構いませんよ」
「・・・自由に、なりたかったから、ですかね」
「自由、ですか」
「俺は歌手としてデビューするまで、自由なんて知りませんでしたから」
「そうでしたか・・・」
「・・・あの、話しても良いですか?
俺が歌手になったきっかけ・・・」
「え?
僕なんかで良いんですか?」
「はい。
俺今まで仲良い人いなかったから。
こうやって話すの、新鮮で」
「あ、僕もです。
話せる人はいたはいたんですけど、皆して僕の体調気にして、楽になれなくて。
僕で良ければ何時間でも聞きますよ」
「ありがとうございます。では・・・」
俺は自分のこと、全て話した。
「確かに、僕も桜田くんの立場なら自由が欲しいかもしれませんね」
「同感してくれる人がいて、嬉しいです」
「そのこと、柚美には?」
「話してませんけど・・・」
「そうですか。
ところで桜田くん、柚美のこと好きなんですか?」
「・・・はっ!?」
思わず素で反応してしまう。


