「でももうすぐでお別れだと思うと、寂しいものですね。
姉のように思っていましたから・・・」
お別れ?
「由芽さん、マネージャーやめるんですか?」
「いえ。柚美がやめるんですって・・・知りませんか?」
初耳だった。
まさか柚美が芸能界を引退しようとしているとは。
「元々柚美が女優をやっていたのは僕らのためです。
両親は仕事で帰ってきませんし、長男の僕はバイトとか出来ませんし、フユはまだ中学生です。
それにまだ小学生の妹たちもいます。
働けるのは・・・柚美しかいなかったんです。
幸い僕らの祖父は俳優で名が通ってます。
祖父が言えば主役は楽に取れるほど。
それを知った柚美は、七光りを使わずに女優をやりたいと言っていたのに急きょ七光りを使いたいと祖父に言って・・・。
柚美は確かに演技が上手いんですけど、最初の方は祖父の七光りでした。
さすがに嫌だと思ったのか、女優業は妹たちが小学校を卒業したら引退しようと考え初めて。
祖父や両親は柚美の好きにしろと言うのですが、僕らきょうだいや由芽さんは許していないんです」
「妹ちゃんたちは今いくつですか?」
「小学4年生です」
後2年もあるが、多分あっという間だろう。
「柚美は女優が大好きだと思うんです。
でも・・・田宮源三郎がバックにいることは変わりません。
今も柚美は、七光りを使う部分があると思います」
「本名の宮田柚美では駄目なんですか?」
「名前を変えたところで顔も変わりませんからね。
宮田柚美が本名でした、と公表しても、田宮ユズと顔は同じ。
田宮ユズが田宮源三郎の孫娘だということは有名ですからね」
七光りは避けられないってことか・・・。


