綺麗だけど、どこか切なげに彼は歌った。
まるで・・・存在を主張するように・・・・。
歌い終わった彼に、1人の男の人が声をかけた。
「僕が君を支える。
デビューしないか?歌手として・・・」
「・・・僕が・・・・ですか?」
「うん!
君、名前は何て言うんだい?」
「・・・アズミ」
そして数日後、彼は『AZUMI』としてデビューした。
しかしテレビには一切出ず、ジャケットにも顔を出さない。
謎の正体不明のアイドルだと言われてきた。
それなのに。
私はその正体を知ってしまった。
知るはずのなかった・・・その正体に。
☆☆☆
「・・・ありがとうございました」
歌い終わった桜田は、恥ずかしそうに笑った。
「・・・柚美?」
「ふぇ・・・?」
私は静かに、音も立てず、涙を流していた。