「実はですね」
桜田は話してくれた。
奥本やマネージャーのこと。
由芽さんに頼まれたことなど。
「だから来てくれたんですか」
「はい」
「わざわざすいません。
僕らの中で唯一元気なのは柚美と妹たちだけでして。
僕と柚美の弟に当たるフユは体力なくて」
「ご自分を責めないでください。
俺も喧嘩は強くないので」
「でも心強いです。
柚美のこと、よろしくお願いしますね」
「柚美だけでなく、皆さんを俺が出来る限り守ります。
大切な彼女のごきょうだいですからね」
「桜田くん・・・」
お兄ちゃんが感動している隙に、私は桜田を呼び出す。
「何で私があんたの彼女なのよ」
「ただのクラスメイトで同じ委員会の人が家に来たら怪しまれるだろ。
彼氏だって言えば、面倒なことはねぇじゃん」
「桜田は大丈夫なの?
家に連絡とかすれば?」
「俺んちのことは気にするな。
連絡なんてしなくて良い」
「どうして?心配するでしょ」
「あのな柚美」
トンッと壁に手を当てた桜田は、私を自身と壁の間に挟んだ。
これは・・・
壁ドン?


