由芽さんは私の家庭事情を知っている。

私が家族を守るため女優をやっていることも。

私が女優をやるのは妹たちが卒業するまでということも・・・。




「ユズ、考え直してくれないかしら?
イチゴちゃんもリンゴちゃんも、自分たちのせいでお姉ちゃんは女優をやめたんだって責めちゃうわよ」

「妹たちには体調不良でやめるって伝えます。
お兄ちゃんには本当のことを言います。
弟には・・・妹たちと同じことを言います」

「ハルくん、納得しているの?」

「お兄ちゃんもおじいちゃんも納得してません。
お父さんとお母さんは私の好きにしろって言ってくれます」

「なら続けなさい?
誰もユズが女優をやめることに賛成してないんでしょ?」

「私もお父さんと同じで七光りなんて使いたくない。
私はごく普通の女子高生なんです。
鳴海や由布子とも遊べませんし・・・。

これ以上隠し事は出来ません・・・」

「ユズ・・・」

「その代わり、ちゃんと私は引退まで女優でいます。
スキャンダルも出しませんし、最高の演技をしてみせます・・・」

「・・・ユズの決心は固いみたいね・・・・」

「由芽さんなら新しい女優さん見つかりますよ。
俳優さんかもしれないですよ、由芽さん好みのかっこいい俳優さんとか」

「あたしのことは心配しないで良いから」

「はい・・・」




話しているうちに現場に着いた。



「田宮ユズちゃん、はいりまーす!」

「「よろしくお願いしまーす!」」

「よろしくお願いします」



今は引退とか考えない。

目の前にあることをやろう・・・!