「だから馬鹿なんだよ。
『AZUMI』の正体が俺だって知ったら、あいつらはどーせ、オレを1位にするんだろ?
今は完全な最下位なのによ」
確かに・・・それは一理あるかも。
もし田宮ユズの正体が宮田柚美だとバレたら、完全に私は最下位から順位は上がる。
1位とか2位になれなくても。
「だから馬鹿なんだよ、あいつらは」
「でも、鳴海ぐらいは覚えよう?
香坂鳴海は、私たちのクラスをまとめる学級委員だよ?
名前ぐらいは覚えようよ」
「そこまで言うなら聞いてみろ。
俺の下の名前をわかるかどうかな・・・」
・・・な、何その言い方。
まるで、鳴海が知らないみたいな言い方じゃない。
っていうか、どうしてそんなに自信があるの?
人気がない私の本名でさえ、クラスの全員知っている。
私と同じぐらい目立たない桜田なんだもん。
鳴海だけは、わかっているはず。
男に詳しい由布子も。
って、失礼なこと言ったわ。
ほんの少しだけ、反省してあげようか。
ガチャ
「『AZUMI』さん、田宮ユズさん、収録再開しまーす」
「はい」
再び桜田は微笑む。
その笑顔、皆にも見せたら良いのに・・・。