トークが終わり、少しの休憩の後、待ちに待っていた『AZUMI』の歌が聞ける。
私は休憩時に由芽さんからもらったお茶を飲みながら、1人で微笑んだ。
「変な顔するなよ」
「し、失礼な!」
「嘘じゃねぇし」
私は昔から、無意識に笑うと、周りから変な顔と言われてしまう。
困った性格だ。
「桜田、何歌うの?」
「あのさ」
「何?」
「俺、今は桜田じゃなくて『AZUMI』なんだけど」
「だから?」
「俺のこと、気軽に桜田とか言わないでくれねぇ?
『AZUMI』は本名とか公開されてねぇし」
「『AZUMI』より桜田の方が言いやすいからね」
「俺の正体がクラスの馬鹿共にばれたら困るもんでね。
言いやすいからという単純な理由で気軽に呼ぶな」
「クラスの馬鹿共って・・・。
地味男がこんな言っているなんて、鳴海たち思わないだろうね」
「なるみ?」
「鳴海のこと知らないの?
香坂鳴海だよ?」
「知らねぇな。興味ねぇし」
「興味ないからって理由だけで覚えていないの?
鳴海ぐらいは覚えようよ」
「は?何で俺がクラスの馬鹿共の名前を覚えねぇといけねぇんだよ」
「鳴海も由布子も馬鹿じゃないよ!
鳴海は、うちらのクラスで彼女にしたい人ナンバーワンだよ!
笠野由布子も、鳴海に続くナンバーツーだし!」
あんな可愛い人たちを知らないなんて、人生損しているよ!