【じっちゃんさん】



じっちゃんさん・・・どうしたんだろう?



「もしもし?どうしました?」

『おぉユズちゃん!
実はユズちゃんにお礼言いたくてよ!』

「お礼ですか?」

『おお!
この間、グルメ番組で俺のラーメン屋宣伝してくれてありがとな!
宮田柚美が好きな店として、客が沢山入ってきてくれたんだよ!』

「本当ですか?
良かったです、嬉しい!!」

『でも、またアズミと来いよ?』

「勿論です!」



電話を切った私は、鞄を机の上に置いた。



この間、グルメ番組でじっちゃんさんのラーメン屋が美味しいと特集した。

そのお蔭でお客さんが沢山入ってくれたんだ!

良かったぁ、言っておいて。



アズミからじっちゃんさんのお店の事情を聞いた時、私は自分の家と比べてしまったんだ。

一時期お父さんやお母さんが働くお店の経営が傾き、私は当時中学生でバイトが出来なくて、私たちの家は水道が止められた時があったんだ。

そのせいもあり、私は女優を始めた。

だからじっちゃんさんがそんな私たちみたいな生活を送ってほしくなくて。

あんなに美味しいラーメン屋を売らないなんて勿体ないから。




良かったなぁ・・・お客さん沢山入って。

私・・・




女優をやっていて良かった。