話さなければ良い。

そう思っていれば大丈夫。

静かにして入れば害はないはず。



「宮田さーん。呼んでいるよー」

「あ・・・はーい」


クラスの子に教えてもらい、廊下に出る。



「おはよう、宮田さん」

「お・・・及川先輩。おはようございます」



首を斜めに上げないと顔が見えないほど身長の高い先輩。

及川泰(おいかわ・たい)先輩、現在3年生。

放送委員の委員長を務めている。



「どうしたんですか?」

「今日宮田さんたちの当番ってこと、忘れてない?」

「あ・・・はい。忘れていません」

「桜田くんだっけ?にも伝えておいてね?」

「わ、わかりました・・・」

「じゃあね」



手を振った爽やかな先輩は、3年生のクラスがある2号棟に向かって行ってしまった。

2年生の教室がある本館から2号棟は、結構遠い。

それなのにわざわざ来てくれて・・・優しいな。



今日は初めての当番。

やるのは、自己紹介と曲を流すこと。

結構やることは少ないので、助かっている。