しかしアズミは凄く冷たく笑った。
「今更父親面?
遅いんだよ、父親面するのはね」
「安海・・・」
「気易く俺の名前呼ばないで。
俺は親父さんの息子でも、お袋さんの息子でもない。
俺はアミさんの息子だからね?」
ニヤリと悪魔を連想させる微笑みを見せたアズミは、私の手を引き、扉を開けた。
私を先に家へといれると、アズミは「そうだ」と言って振り向いた。
「これ以上俺の邪魔しないでね?
俺が桜田の名字って時点で気が付いてよ。
俺があんたたちの息子じゃないってこと。
あんたたちとは名字が違うんだから・・・」
バタンッと力強くアズミは扉を閉めた。
「・・・アズミ?」
「俺の家ねぇ、複雑なんだよ。
あの人は俺の父親だけど、父親じゃないしね」
「・・・?どういうこと?」
「名字が違うの。
俺は実の母親・・・さっき言ったアミさんの名字、桜田を使っているから」
「お父さんたちは?」
「薮内(やぶうち)。小さくて今にも潰れそうな会社」
「お父さんはそこの社長さんなの?」
「そう。
・・・長くなるかもだけど、聞きたい?」
「・・・良いの?」
「別に隠していないし。良いよ」
「・・・うん」
私たちはリビングに行き、ソファーに座った。
現在の時刻は朝6時。
ここから学校までは近くて、8時に出れば間に合うから。
アズミは私の手を握ったまま、話し出した。


