「困ったぼっちゃんね、あなた」



今まで私を睨みつけていた女の人が溜息を吐きながら言う。




あなたってことは、このエリートっぽい嫌味なおじさんはこの派手女の旦那さん?

この旦那さんはどう見てもアズミの父親だから・・・。

この派手女がアズミの母親!?

うわ~・・・見えないなぁ。



「家に行くぞ、荷物をまとめろ」

「それは断る」

「何故だ」

「俺、あの家出て行くからね」

「何を言っているんだ」

「お金のこととか学費なら心配しないでよ。
俺ぐらいになればそれぐらい簡単に稼げるし」

「あのはした金でか?」



はした金!?

あの私よりも多いお給料がはした金?

それならおじさんどれだけ稼いでいるのよ・・・。



っていうか、この親子、怖い・・・。

こういうの、冷戦って言うんだと思う。

怒りをあらわにせずに冷たい口喧嘩をする。

怖すぎる・・・。




「はした金?
少なくとも親父さんよりは俺の方が稼いでいるよ?
なにしろ俺はあの『AZUMI』だからね」



まだ未成年の息子の方が稼いでいるって・・・。

おじさんエリートっぽいけどね。