それに………大好きなお父さんに
“お母さんを頼む”なんて頭を下げられたら……断る事なんてできないじゃん
『ユウキ、久しぶりにサッカーやろうか』
お父さんは俺のランドセルの横にぶら下がってるボールを指さして言った
俺は涙を拭いた
『毎日練習してるからお父さんより上手くなったかもよ』
そんな強がりを精一杯演じた
俺達はボールを蹴り合いながら笑った
このまま時間が止まって欲しいと本気で思った
俺は来るボールを一生懸命、お父さんに向けて蹴り続けた
蹴り続けないと…………
このボールを止めてしまったら、お父さんとの別れが待っているからー…
時間は巻き戻す事が出来ない
時間は止める事が出来ない
時間は………
早送りする事も出来ない
ただ出来るのは今を生きる事
子供扱いされたくない、だけど俺は子供で……
やっぱり大人の事情を理解する事は難しい
お父さんは優しい人だけど、俺を連れて行ってくれない
それにも何か事情があるんだと思う
お母さんとお父さんの間には、俺がまだ知らない“何か”があるような気がした
大人になったら……お父さんの気持ちも、お母さんの気持ちも理解出来る日が来るのかな?
そんな事思っても……
時間は早く進んでくれない
俺が大人になるまで待っていてくれない
お父さんと俺は日が暮れるまでボールを蹴り合った
そしてこれが………
二人でサッカーをやった最後の日になった



