おじさんは静かに椅子に腰掛けた
俺はもちろん座る事なんか出来ず、ポツンと立ったままだった
椅子に座ったって事は話す気があるって事だよな…?
今なら…答えてもらえるかもしれない、あの質問を……………
『ミノルの事どう思ってますか?』
ドクン………ドクン………
頼む……答えてくれ
ドクン……
ドクン……………
『あの子を見てると辛い』
おじさんはポツリと呟いた
え……辛いって………?
『何が辛いんですか?ミノルが健康じゃないから?』
おじさんはフッと両手を広げて、唇を噛み締めた
…………?
『私はこの手でたくさんの命を救ってきた。地位も名誉も手に入れたのに、なんで自分の息子を助ける事が出来ないんだろう……』
『……………』
『だからミノルを見ると辛いんだ。自分が不甲斐なくて情けなくなる』
俺はそんなおじさんを見て、静かに口を開いた
『……おじさん…俺難しい事は良く分からないし、ミノルの病気の事だってまだ理解出来てないよ。でも…』
『…………』
『でもさ……ミノルはミノルだよ。あいつを見るのが辛いなんてそんな事言わないで…』
言わないでよ……
俺は子供でミノルは病気でおじさんは医者で…
おじさんの口調からしてミノルの病気は重い
治す事が出来ないって………
じゃぁ…もう治らないって事?
それを聞くのが怖い
でもあの日のミノルの言葉が頭を駆け巡る
“僕は逃げない、病気からも現実からも逃げないよ”
あの強い瞳が忘れられない
『おじさん……俺あいつの事可哀想だなんて一度も思った事ないよ』
『?』
『病気の事を知った今でも可哀想だなんて思えない』
声が震える
込み上げてくる感情で涙が……涙が止まらない
『だってミノルはここに居るから、ちゃんとここに居るからー…』
俺とミノルの違いなんて一つもない
同じ時間を過ごして
夢を語り合って
笑いあった
俺達の間に“病気”なんて言葉はどこにもないんだよ



