おじさんは俺の言葉を聞いて、鼻で笑った
『病気抜き?面白い事を言うね君は』
………ッ
俺は右手の拳をギューッと握り締めた
それをおじさんに向ける訳でもなく、必死に冷静を保った
俺に出来る事はこの人を殴る事じゃないから
『おじさん……ミノルね、俺があげたガムを宝物だって言うんだよ』
『?』
…俺に出来る事は、俺の言葉でこの人にミノルの事を伝える事
ミノルの全部なんて俺の言葉では伝わらないかもしれないけど…………
少しでもほんの少しでも伝わって欲しい
『桜が散ると悲しいって言ったら、桜の絵を書いてくれたよ』
『……?』
『今日も細い足なのにサーカーボールを高く高く飛ばしたよ………それでいつもミノルは笑うんだ。すごくすごく優しくて暖かいんだよ』
おじさんは何も言わずに無言だった
だけどコツンー…コツン…と足音は俺の方に戻ってくる
今まで見てきたミノルを、どんな言葉にしたら全部伝わるのかな
だけど言葉は選ばない
この込み上げてくる想いを、今目の前に居るこの人に届けてみせる



