俺はボールを地面に置いて、蹴り始めた
小さな公園だけど、サッカーをやるには十分な空間
それに…何の遊具も置いていないから、広々と活用できた
……とその時キィィー…と鈍い音が耳に聞こえた
それは病院と公園を繋ぐ、フェンスで作られた小さな扉、音のする方を振り返ると………
『あら?』
全身白い服を来た女の人が不思議そうに俺の方を見た
『僕一人?』
そう優しい声で問いかけた
『う、うん………』
俺は少しうつ向きながら頷いた
『ここの桜綺麗でしょう?』
『うん…』
俺はうん、うんと不安そうに返事をして女の人を見上げた、すると…………
『お姉さんあそこの病院で働いてる看護婦なの』
と白い建物を指さして中腰になった
看護婦さんなのか……
『なんでここには桜が咲いてるの?』
看護婦さんだと聞いて、少し安心した俺は聞いてみた
普通満開に咲くのは4月なのに……
『ここはウツギ町、ウツギの花は6月に咲くのよ。だからこの桜も6月に咲くの』
と看護婦さんは笑った
『…………?』
俺は首を傾げた
看護婦さんはまたニコッと笑い、手に持っていたインスタントカメラを桜に向けた
パシャッパシャッ
何枚も何枚も桜を撮り続けている
その様子を黙って見ていると、
『この写真はこの桜を見に来れない患者さんの部屋に貼るのよ』
看護婦さんはそう教えてくれた



