子供達は既に座っていて、頭上に広がる星座達を口を開けながら見入っている。彼女の子供達の横に彼女が座り、そしてその横に彼が腰を下ろした。
 上を見上げていると自然と背もたれが倒れ、暗闇と囁くようなナレーションが相俟(あいま)って、寝不足の彼女はあっという間に体がポカポカと温かくなっていく。
 時折、隣に座って居る子供達がなにやら話しかけてくるが、辻褄の合わない返事を返し、いつしかその瞼は閉じられてしまった。





「あっ、ねぇねぇ、あの星座って君の――あ、寝ちゃったかな?」

 彼が星座を指差しながら彼女に顔を寄せると、幸せそうに目を瞑った彼女の規則正しい寝息がスースーと聞こえた。

「……」

 まるで小さな子供の様なその寝顔がいとおしくて、彼の口元が緩む。彼女の手にそっと手を伸ばすと、ふと、誰かの視線を感じた。

「?」

 彼女の幼い子供達が、彼と繋がれた母の手をじっとみている。そんな自分達の様子を彼に見られているという事に気付いた子供たちは、慌ててもう片方の彼女の手を握りしめた。それはまるで“取られてたまるもんか”と言わんばかりだった。
 そんな小さな騎士(ナイト)達に、彼の心は簡単に奪われてしまった。

「ママが好き?」
「うん、好き!」「しゅき!」

 声を揃えてそう言うと、彼の目尻がますます下がっていく。

「そっかー。あのね、実は僕も君たちのママが好きなんだけど、ママと手を繋いでていいかな?」

 子供たち二人はお互い顔を合わせ、しばらく考えた後、

「うん、いいよ!」「いいよ!」

 と元気良く答えてくれた。