「プラネタリウム?」

 移動中にすっかり仲良しになった子供達は、車を駐車場に止めた途端、二人を置いてさっさと行ってしまった。
 子供達が行ったのを確認した彼は、歩きながら彼女の手を捕まえる。

「うん、ここなら子供も退屈しないでしょ?」
「う、うん、そうね」

 てっきり喜んでもらえると思っていたが、どうもそうではないらしい。彼女のわずかな表情の変化は、すぐに彼に見破られた。

「気に入らない?」

 そう言って、彼女の顔を覗き込む彼に、彼女は慌てふためいた。

「ううん! 違うの! ……その、――プラネタリウムって基本、真っ暗じゃない?」
「うん、そうだね?」
「その、寝てしまいそうで……あははーっと」

 言い難そうにそう言うと、彼はピタッとその場で立ち止まり怪訝な顔をした。

「何? もしかしてまだ夜働いてるの?」

 そう言われると判っていたかのように、彼女は上目遣いで彼を見ながら黙って頷いた。

「ええっ!? 夜働くのはもう辞めるって言ってたじゃん? 大体、昼も夜もって働きすぎだって。体壊すよ? っていうか、そもそも君は仕事なんてしなくていいんだよ、生活費くらい僕が出すから」
「そういう訳には」

 今まで何度もこの事について話し合ってきたが、彼女はいつでも首を縦に振る事は無かった。『自分の子供だから、自分の力で育てたいの』彼女はいつもそう言っていた。
 意地でも仕事を辞めようとしない彼女に、彼はお手上げだと言わんばかりに肩を竦める。

「ったく! ──もう、判ったよ。でも一人で頑張りすぎるんじゃないよ? いつでも僕を頼っていいんだからね?」
「うん、ありがとう……」

 二人は微笑み合うと、既に始まっているのかすっかり真っ暗になった会場の中にそっと入っていった。