*
その一歩を。
いま、踏み出そうと思う。
帰りのHRの先生のいつも通りのだらだらとした連絡事項が、いつもより遅く感じる。
終わったら、すぐに。
聖羅ちゃんにバレないように、すぐに。
隣のクラスの藤谷くんに、放課後の約束をしに行くんだ。
…って言っても、もう放課後だけど。
もしかしたら、今日…藤谷くんと聖羅ちゃんが放課後に遊ぶ約束をしてたらどうしよう。
それの…邪魔はしたくない。
そんなひどいことは避けたい。
だけどどうしよう…。
聖羅ちゃんに、なんて聞けばいいかな?
あーもー……、わかんないよ…。
頭の中がこんがらがって。
なにをどうすればいいのかわからなくなってきた。
「じゃあ、今日はこれで終わり」
先生のいつもの最後の言葉を聞いて。
号令係が『きりーつ』と号令をかけた。
早く…!
これは焦りなのかな?
でも、とにかく早く終わって…!
「気をつけー、礼」
「「さようならー」」
みんなが一斉にドタドタと動き出す。
よし、私も……!


