「……鈴?」
ひとり言でボソッと呟いたのに。
藤谷くんのほうを見ていた聖羅ちゃんは、私のほうを向いた。
「あー、これかな?」
聖羅ちゃんはポケットからスマホを出して、そこについてる鈴のキーホルダーを見せて来た。
ピンクの根付の少しだけサビた鈴…。
「そ…それ、どうしたの?」
「光輝がいらないからくれたんだよ」
「いら、ない…?」
「そうみたい」
いらない、か…。
そっか……。
私を覚えようとするモノを手放したってことは。
もう覚えようともしてないってことか。
少し前は…鈴を見て思いだそうとしたって言ってたけど。
ダメだ……。
もう辛いよ。
「聖羅ちゃんっ。
私、英語の予習やってないんだった!
先行ってやらなきゃ!」
「え! そうなの?」
「う…うん、ごめんね。
じゃあ、またあとで!」


