キミと帰る道






「それで…生きていく上で、私以外の人のことも覚えなきゃだと思うの。

これね、藤谷くんのクラスの座席表」





ポケットから四つ折りにした紙を藤谷くんに差し出す。




この前、あみちゃんに教えてもらったやつ。





「…座席表?」




「席で覚えられるかなって。
藤谷くんのクラスメイトの誰がどこに座るかだけ把握してみれば?

…顔はわからなくても、席と名前だけ」




「……わかった。 覚えてみるよ」




「私のことは忘れてもいいから。
この紙と病気の名前は…忘れないでね」




「あぁ。 ありがとう、逢原」





藤谷くんと不意に視線が交わって。
なんだか少し…ドキドキする。





トクントクンと鳴る胸を抑える。





私のことを覚えてね。
瞳と声だけじゃなくて。





〝逢原すず〟という存在を…この高校を卒業するまでに、覚えてくれるといいな。