「…病気なんだよ、それは。
でも治療法はなくて。
自分で人の顔の覚えやすいパーツで人を見分けなきゃいけないんだよ」
「……おまえの。 逢原の瞳と声、俺は…知ってる」
「……へ?」
瞳と声……?
知ってるってことは、少しでも覚えたってことなの?
なんだかそれだけでもすごく嬉しくて、思わず泣いちゃいそうになるよ。
「あと、これくれたのっておまえ?」
藤谷くんはポケットからスマホを取り出して、鈴のキーホルダーを見せて来た。
「…〝すず〟って名前だから。
覚えてもらおうと、私が藤谷くんにあげたの」
「……家に帰って、スマホ見るたびに鈴の音がして。
だけどこれを誰からもらったか覚えてなくてさ…」
「…そっか」
でも私のことを思い出そうとしてくれてることが、ものすごく嬉しい。


