「……せいら…?」





そんな低音の、聖羅ちゃんを呼ぶ声が病室に響いて。
私はベッドのほうへ向き直すと。





さっきまで閉じていた瞳は、微かに開いていた。








ドクン———と胸が波打つ。
怖い。…ものすごく怖い。





「光輝! 目覚ましたんだね…」




「聖羅は心配しすぎだろ…」





起き上がった藤谷くんは、涙をぽろぽろと零す聖羅ちゃんの頭を優しく撫でた。





少し篭った声だけど。
…また藤谷くんの声が聞こえて良かった。





「なー聖羅。
…その人たち………」





藤谷くんはついに私と優芽ちゃんに気づいて、じーっと見つめてくる。






———やめて。
その続きを…、言わないで…っ!








「———誰?」








……現実だって、わかっちゃうから。

ううん。もう、わかっちゃった。





藤谷くんは私を記憶から消した。
優芽ちゃんのことは、失顔症ってこともあって特徴としか覚えてなかったのかも知れないけど。





…私は昨日話したのに。
ちゃんと覚えてくれてたんだから。
たとえ失顔症だとしても急に忘れるわけない。