そんなお母さんの手には、ひとつの写真立てが握られていた。
「私のせいです…。 藤谷くんが私を庇ったから…っ」
「やめて。 顔を上げて?すずちゃん」
そう言われても、私は下げた頭を上げることはできない。
…藤谷くんのお母さんから、ふたりも子供を失わさせたかもしれなかった。
華菜ちゃんに続いて藤谷くんまで…。
藤谷くんのお母さんの整った顔もさっきよく見たら、目にクマができていてものすごく疲れた顔をしていた。
…私みたいに、藤谷くんのお母さんも。
藤谷くんが死んじゃったらって少しでも考えてたかもしれない。
「すずちゃん…お願いだから、顔を上げて?」
両肩に優しく手が置かれて。
私はゆっくり顔を上げた。
「光輝は生きてたのよ。 すずちゃんは悪くない」
「……っ」
藤谷くんが生きてて良かった。
藤谷くんがもしも…って考えると、胸がものすごく苦しくなる。
それに、藤谷くんの周りの人まで傷つけてしまうところだった。


