藤谷くんがそんなこと言うから。
忘れようとしてたのに。
また、気持ちが溢れちゃうよ…。
『好き』って伝えたいけど。
拒否されるのが怖くて。
告白って、肯定か否定かのどちらかだけど。
もう、否定されたときの…気持ちは味わいたくないから。
———溢れないで。
「じゃあ、またあとでな」
「…っ、うん」
藤谷くんはまた柔らかく笑うと。
くるりと踵を返して、屋上から出て行った。
「………なんで…」
もうここにはいない藤谷くんに問いかける。
だって、頭に残るのは疑問しかない。
お互いに忘れかけてたんだよ。
…あたしはこの恋心を。
藤谷くんはあたしの存在を。
なのに、思い出しちゃうなんて。
困惑するし。
本当に、戸惑ってしまう。


