森を抜けるのは簡単じゃなかった。
 


恐ろしいほど広い森で、舗装されているわけではないから獣道ばかりで、木の根っこに足がひっかかったりよくわからない蔓草に髪がからまったり、飛び出した石に滑ったりなんだりで夜を迎える頃にはぼろぼろになっていた。
 


結ちゃんがなぜかやたらアウトドアに慣れていて、火をたいたり適当な果実をとってきたりしてなんとかその日を追えたけど、二日目は昨日の疲労が響いてなかなか足が進まない。
 

途中で一度またこの前の兵士に囲まれて、結ちゃんがなんとか全員倒して事なきを得た。
 


でも、まるでよくわからない。
 


結ちゃんはいくらきいても、肝心なことは話してくれなかった。
たどり着いたら話をするの一点張りで、一体ここはどこなのか、誰が私たちを狙っているのか、なぜ結はこんなに動じずにしかも敵まで倒してしまうのか。
 


やっと森の出口が見えた頃、すでに森の旅は四日目を迎えていた。






森を抜けて広がっていたのは、久しぶりに見る舗装された道と町。…というか、村と表現した方が近い感じの場所。しかも、RPGに出てくるようなダンジョンの村って感じの村。
 


ただ、どこか違うというか、おかしいのは。




「…蔦?」
 



家という家、塀という塀に、蔦や蔓が節操なしに絡まっていた。どの家もそうだ。
 


緑がいっぱいなんて呑気な表現できないくらい。まるで木の蔓がその家の人たちを閉じ込めようとでもしているかのようだ。
 



一体どうなっているんだろう…。



「とうとうこの辺りまでもですか」
 


少し前に立つ結ちゃんがぼそりと呟く。
 



その言葉の意味を知りたくない。知ってしまったら、嫌な想像ばかりが無限に広がりだしてしまいそうな気がした。