ひたすら棗を思おうと、彼は私を振り返ってはくれないだろう。 彼の目に映るのは、きっと―――― 「俺、明後日から大会なんだ。 亜子は最近、大会とか記録会とかねぇの?」 ぼんやりと、隣に並ぶ、太陽のせいで縮まっている影をぼんやりと眺めていた。 そんな私の顔を覗き込みながら、話しかける。 ハッと顔を上げ、うーん、と小さく首を傾げた。 「あった、と思うよ。 うん、再来週辺りにあった・・・・・・はず」