山本さんの声にはっとして僕と井上ちゃんは、見張りに戻った。


確かに何が起こるか分からない。


男が現れたのを発見出来たのも見張りのお陰だと思った。


男から何か情報が貰えるかも知れないと思うと少しだけ気持ちに余裕が出来た。



今までは新しい出会いと言えば敵ばかりだったが、今回は違うかも知れない。



「内田君裏山の上にあるって言う温泉に入りたいね。
今まで、いつでもその気になれば行けると思ってから行かなかったけど、気持ち良いだろうね。」



井上ちゃんも同じ気分なのだろう珍しく楽しい話題を話してきた。


「そうだね。気持ち良いだろうね。かなり上まで行かないといけないみたいだけど川ばかりだと身体も辛いね。」



「それに、元々傷んでた髪がキシキシだよ。今度樋口さんにどうやって行くのか聞いてみようかな。」



井上ちゃんの口から樋口さんの名前が出るとは思わなかったが、確かに樋口さんは裏山の温泉を目当てに来ていたのだから聞いてみると良いよと答えた。