僕は初老のマスターにホットコーヒーを注文して煙草に火をつけた。


美味しかったら山本さんを連れて来ようと思った。


ついつい山本さんの事を考えるのは頼りにし過ぎてるからかと思う。


店のドアが開いて井上ちゃんが入ってくると僕の横に座った。


同じようにホットコーヒーを頼んで煙草に火をつけていた。


「悩んでるの?話したらどうなの?」


井上ちゃんは自然に僕にそう聞いてくる。


僕は井上ちゃんには腹の中を見せようと思い悩みを話した。


いつも何処かで誰かをあてにしてるんだとも話した。


「そりゃ誰だってそうなんじゃない?それに山本さんってのはそういう引力を持ってると思う。

粗野でデリカシーはないけど元々そういうのを持ち合わせてるんだと思うよ。


頼れる所は頼れば良いのよ。

山本さんだって内田君に頼れる所は頼ってたと思うよ。」



「僕を!?そりゃないよ。」


「馬鹿ねえ。そりゃ有るに決まってるでしょ。山本さんが一番あてにしてたのは内田君だよ。

そんなのも分かんないんだ。

まあ、それが内田君の良い所だけどね。」



僕達は黙ってコーヒーを飲んだ。


二人で美味しさに驚いて顔を見合わせた。


僕は井上ちゃんの手を握ると井上ちゃんが、握り返して来て大丈夫よと繰り返した。