のたうち回るゲツジンの右足を思いきり何度も踏みつけた。


ゲツジンの動きが完全に止まった。


横を見ると樋口さんは鉄パイプで既に倒していた。

井上ちゃんを再び担ぐと車まで行った。


皆を車に乗せると樋口さんに頼んで煙草を一本貰い外で吸った。


吸い終わると樋口さんに僕は言った。


「ここは頼みます。やはり行かないと一生後悔しそうです。お願いします。」


樋口さんは馬鹿な男達とだけ言うと分かったと答えた。


僕は井上ちゃんの鉄パイプを腰に入れて走った。


僕を含めても四人でどうなる物でもないかも知れない。


だけど、行かないともしも、生き残れても後悔が一生続くだろう。


それなら行こうと思った。


心の隅で馬鹿だなと笑う自分自身が居たが気分は悪くなかった。


塹壕に着くと誰も居なかった。


多分山に入っているのだろうと思い山に向かった。


弓が時々降っていたがそれほどではないのはゲツジンも相手を絞って戦っているのかも知れなかった。


林の奥で倒したゲツジンの側で煙草を吸ってる山本さんと会った。


山本さんは怒るかと思ったらニヤリと笑った。


日焼けと血と泥で汚れた顔だが歯だけが白く見えた。


「馬鹿野郎だな。」


そう言うとクククと笑った。