もちろん、他の仲間も大事だがこの一番若くて純粋で優しい女の子を守らないといけないなと僕は改めて思う。


しばらくすると、今宮君が誰かをおんぶして皆でこちらに戻って来た。


塹壕の前で降ろすとその人は、まだショック状態なのか座り込んだまま動かなかった。


手足が震えているのが分かる。


作業服に汚れたスニーカーを履いていた。


年齢は多分五十代だろう。


髪に白いものが沢山混じっていて細身で日に焼けていた。


手など見ると肉体労働者の手のようだった。


身長は高くも低くもなく特徴的な所が少なかったが、額に古い傷が斜めに大きく入っていた。

顔や身体のあちこちに小さな新しい傷も見えた。


山本さんが缶コーヒーを渡すと震える手で明けて一気に飲み干した。


「水を飲むかな?」


と山本さんが、珍しく優しい声で聞く何度も頷いたのでこと美ちゃんが僕の飲みかけをさっと渡した。


それも一気に飲むと少しだけ落ち着いたように見えた。


「たた、煙草を…」


と言ったので山本さんが、口にくわえさせてあげて火をつけてやる。


深々と何度も吸った為に一気に一本が無くなった。


山本さんが、もう一本を同じようにくわえさせて火をつけた。


今度は少し落ち着いて吸った。


「おじさん、少し落ち着いたらこの若いのに身体を拭いて貰いなよ。着替えは大きいけど俺のがあるし、今の汚れた状態だと嫌だろう。」